うん、渋い。
なんとなく、苦手意識があった。
大学1年生の終わりの頃、管弦楽部の追い出しコンサートで突然やらされた、交響曲第3番「ライン」。
もちろん自分はクラシックオケも1年生、演奏したことがあるオケの曲もまだ片手の指でも足りる頃。
知らない曲の、知らない譜面。
しかも譜面の移調も脳内で出来なかったころ。
音符の数も多く終始吹きっぱなしで
当時はまったく歯が立たずただただ楽器を持って椅子に座っていただけだった。
オケとは恐ろしいところだなとも思った。
全部inFで書いてくれたらある程度ついていけたかもしれないのに。
その機会があってから、何年もシューマンとは縁がなかった。
シンフォニーじゃなければ、パラパラっとさらって遊ぶこともあった。
まぁなんだ、とにかくホルンに無茶をさせる人だなぁと思っていた。
ラインの譜面も、後から見てもやっぱり難しそうで「あのとき吹けなくても仕方ないわこれは」と思っていた。
そんな感じでシューマンっていう作曲家についても楽器に無茶させる以外イマイチよくわからないままだった。
ピアノが好きすぎて指を柔らかくする機械で指を壊した話を聴いたくらいか。
あとは、ブラームスとのつながりがよく語り草にされるが、せいぜいブラームスの交響曲をやるときに指揮者がシューマンを小咄として出すくらいでほんとによく知らなかった。
シューマンは4曲の交響曲を書いていて、一応一通り聴いたはずだったけど全然印象にも残らなかった、刺さらなかった。
そんな中降ってきた、シューマン4番の演奏機会。
まさかやることになるとは思ってなかった。
Youtubeでいろんな音源を聴いてもやっぱりどこか退屈というかひっかかりがなくて、よく聴いてるうちに寝てたなんてことも多かった。
とりあえず何か掴めるまで…と譜面を見ながら聴いたりもしたけどどうにも現在地を見失って、どこだどこだとやってるうちに曲が終わる。耳からの情報と目からの情報が一致しない。
めっちゃ苦戦するな、と思った。
合奏練習が始まっても、まぁついていけないこと。流れができている状態からならついていけるが、テンポが変わるところゆれるところ緩むところ巻くところ、拍子が変わるところことごとく見失った。
しかも想像していたより3倍スタミナが持たない。吹いているうちに口がバテて音がポロポロ外れるようになる。
(バテるはホルンだけじゃなくオケ全体で、と気づくのはしばらく後だけど…)
1音1音の演奏効果が薄く、燃費の悪い曲だなぁなんて思ったりもした。とにかく吹くので…
舞台上に生肉と肉焼きセットを持って行ってこんがり肉を焼かなければ、本番はどうなるやら…
練習始めて3ヶ月くらいはほんとうに苦行、だった。
ところがどっこい。
この曲は半端なくスルメ曲だったのだ。
練習が進めば進むほど、曲を聴けば聴くほど、ジワジワと味が染み出してくる。
パッと聞いただけでは得体の知れないフレーズがだんだんと意味を持って聞こえ始める。
聞き流していたハーモニーの流れを丁寧に耳で拾えば、わずかな眼の見開きや翳りで感情を表しているような驚きがある。
厳しく嘆き、必死に喜んでいる姿も見える。
とにかくうまく言えないけれど、この曲の良さに気づくまでずいぶん時間を費やしてしまった。
サラッと感覚で聴いてあっいいな!というよりは、小説を読むように頭で理解しながら聴くと良かったのかも知れない。やっぱりいぶし銀の曲だ。
(曲を知るには演奏をしてみるのが一番早いなと思ったのは内緒。)
初めて聴く人は、
「この曲の良いところはここですよ!」とか、ガイドしてくれる人がいると、咀嚼が早まって味わいが深くなるかもしれない。
いまでは好きな曲のひとつとなった。
告知です!
シューマン4番を演奏するコンサートがあります!
よろしければ聴きに来てくださいましな。
チケット予約はこちら!無料です!